「超・嫌煙家3」


 木村は、喫煙者には2種類あるという結論に至った。
 頭が弱く、情緒不安定な人間。
 頭が弱く、身勝手な酷い人格の人間。
 木村はこの真理に気付くと、途方もない厭世観に襲われた。
 世の中、間違っている。
 間違うにも程がある。
 昔はいざ知らず、こんなに煙草の害の情報が行き渡ってい
る現代においてのこの高い喫煙率は、まさに喫煙者にはこの
2種類しかいないと証明している。
 ここに及んで、木村は喫煙者という人格を信頼できなくな
ってきた。
 あいつらとの付き合い方も、考え直そう。
 木村は、自嘲ぎみに薄笑いを浮かべた。
 はは、こんな時に煙草は必要なのかもな。

 彼らは主張する。
 自分の好きで煙草を吸って、自分の健康を損なおうとも、
自分の勝手だ。と。
 頭の弱い連中は困る。
 彼らは、他人が自殺しようとしても、止めないつもりなの
だろうか?
 他人の自滅は、彼らにとってはどうでも良いことらしい。

 彼らは主張する。
 副流煙については、自動車の排気ガスはどうなるのか。何
故自動車が良くて、煙草が駄目なのか。と。
 情けない連中だ。
 頭の弱い人格破綻者は、もう救いようがない。
 さすがに脳細胞を殺しまくっているだけはある。
 車と煙草は違う。
 これでは、先生に注意された幼稚園児が、だって〜くんだ
ってやってるもん! と抗弁しているのと変わらないではな
いか。
 誰かが大気を汚染してたら、彼らも汚染して良いことにな
るらしい。
 どんな理屈だろう。

 2週間後、木村に突如恐ろしい出来事が起こった。
 娘の机の引き出しから、バージニアスリムライトメンソー
ルを発見したのだ。
 晴天の霹靂とは、この事を言うのだろう。
 まさか、うちの娘が・・・・?
 木村は呆然自失となった。
 過度の衝撃が、木村に正常な精神活動を放棄させた。
 ぼんやりと、木村は思った。
 まさか、まさか、うちから喫煙者が出るとは・・。
 ドアベルが鳴った。
 木村にその音は届かず、町内会長は町会費をとり損ねた。

 木村は「市立青少年教育センター 相談係」の門を叩いた。
 自分一人には余る問題だ。
 専門家の知恵を拝借しなければ。
 係の女性は、最初木村の鬼気迫る様子に緊張し、その後は
ただひたすら困惑してしまった。
 震える声は娘の現状を嘆き続け、血走った眼はそれが本心
である事を告げていた。

 木村は苛立った。
 この係の女性は、喫煙の深刻さと重大さにまったく気付い
ていないらしい。
 おかげで木村は、喫煙とは何たるかを、一から説明しなけ
ればならなかったのだった。


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