「鯖子の怨念」


 まだ誰も知らずにいた。
 日本には、貞子を超える怨念が眠っている事を。
 まだ誰も知り得なかった。
 それが、ひっそりと犠牲者を待ち続けている事を。

 鯖子は超能力者だった。
 時は大正時代。村は鯖子を受け入れなかった。
 色々あって生きたまま井戸に落とされ、鯖子は悲惨な死を遂げた。

 
 とある伊豆の貸し別荘は、若者達で賑わっていた。
 夏休みを利用してやってきた同じ大学のグループである。
 男女合わせて7人。
 もう気心も知れ合い、夜がふけるというのに、笑い声が絶えない。
「何だこのビデオ?」
 男の一人が、テレビの下にある棚から古ぼけた一本のビデオテープを発見した。
「どうしたの?」
 女の一人が、肩越しから覗き込む。
「このビデオ、やけにちっちゃくねえ?」
「あ、これベータじゃん」

 恐怖は……始まらなかった……


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