「妊婦と僕達」


まさるとミツオは道を歩いていた。
田舎道で、そうめったに人とも出くわさない。
季節は秋の始まり頃、紅葉にはまだ早く、木々は青々と茂っている。
名前も解らない黒くて小さい蝶が、目の前を横切る。

前の方から、女性が近づいてきた。
お腹がかなり大きい。
妊婦のようだ。
何気なくすれ違いそうになったその時、

「うっ・・・」

妊婦が低く苦鳴を漏らし、うずくまってしまった。
二人は焦った。

「どうしたんですか?」
「大丈夫ですか?」

「う・・・生まれそう・・・」

「!?」

二人は仰天した。
なんだこの状況は?

「どうしよう?」
「困ったな」

「産まれる〜〜」

「産まれるって言っているぞ」
「どうすれば良いんだよ?」

「よし、あそこに民家がある」
「うん、とりあえずあそこに連れていこう」
「田舎の人間は親切に違いない」
「うん、頼ろう!」

女性は、何とか二人の肩を借りて民家にたどり着いた。
居間らしき部屋に寝かされた。

「困ったぞ」
「ああ困った。まさか留守とは」
「どうしよう?」
「どうしたら良いんだ?」
「仕方がない。僕たちで何とかしよう」
「待てよ。無理だ」

「苦しい〜痛い〜」

「残念だが、お腹の子は待ってくれそうにない」
「わかった。何とかするしかない」

「ところで、どうしたら良いんだ?」
「そうだ! こんな状況はマンガとかで見たことないか?」
「言われてみればあるぞ!」
「よし、お湯を沸かせ!」
「ああ、たくさんだ!」
・・・・・・・・・
「お湯を沸かしたが、これからどうするんだ?」
「っていうか、そもそもこのお湯は何にどう使うのだ?」
「・・知らない」
「困ったぞ」
「ああ、とても困った」

「もう駄目〜〜産まれる〜〜〜」

「バカ! よく考えるんだ! マンガではどうした?」
「どうしただろう?」
「思い出すんだ!」
「そうだ、男は外に出るんだ!」
「おお! そうだった!」
「よし、一刻を争う! 早く外に出よう!」
「ハラハラしながら待つことにしよう!」
・・・・・・・・・・・・
「外に出てきてしまったが、これで良かったのか?」
「ふむ、根本的な間違いを犯している気がするな」
「いや、持てる知識はフル動員したんだ」
「そうだ、人事は尽くした」
「あとは天命を待つしかあるまい」

救急車が到着したのは、それから10分後だった。
女性が自力で119番した結果だ。

ホっとした気持ちになった二人は、また道を歩き始めた。
「その手があったか」
「コロンブスの卵だった」
「勉強になったな」
「ああ、この経験を積んでまた一回り大きくなれる気がする」

茜色の光が、二人の男を照らしていた。


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